『切手と印刷』

切手収集家一人一人に集め方や興味の方向性、また、その人の知識レベルなどがあり、それらが複雑に絡み合って一人の収集家として独立しています。

ですから、製造面にも使用面にも興味が無く、とにかくカタログ通りに1枚でも増やしたい収集家が居るかと思えば、未使用には目もくれずに消印のみを追いかける収集家も居ます。
ただ、そうした収集家も切手そのものをトータルに見ようとした場合には未使用が必要ですし、数々の製造工程を経た結果としての切手を知るためには、切手の製造技術を知らなくてはなりません。

その製造技術のイロハを知るための、とりあえずの一書として誰もが手にするのが『新版 切手と印刷』だと思います。
書名に「新版」と付くからには、それに対して「旧版」(書名は『切手と印刷』ですが、ここでは便宜上「旧版」とします)もあります。
「新版」の方は1977年の発行で、「旧版」は1949年の発行。

内容が古い本と新しい本の2種があった時に、人の気持ちとして「どうせ買うなら、内容が新しい方が良かろう」と思い「新版」を選択するのは、一般的に普通の考え方だと思います。
まぁ、中には「旧版」の存在をご存知無い方もいらっしゃいますが・・・。(じゃあ、なんで「新版」って付くの?)

ここで、結論を先に言ってしまえば、製造面を知りたければ「新版」と「旧版」の両方を揃えた方がよいということ。

切手収集というのは、なにも最新の切手ばかりを集めるわけではなく、逆に50年前、100年前の古い時代の切手を集めることの方が多いと思います。
そうした古い切手の製造技術を知るには、新しい文献だけに頼っていたら片手落ちになってしまうでしょう。
古い技術を知るための技術書は、当時記されたものが一番良いのです。

そうした意味で「新版」と「旧版」の30年弱の差は大きく、そこに「旧版」も合わせて目を通す理由があります。
もちろん、全体的な詳しさから言ったら「新版」の情報量は「旧版」の数倍はありますが、例えば「平版切手」だけを取り出すと、圧倒的に「旧版」の方が内容的に優れています。
「旧版」が書かれた1949年当時、既に平版切手の製造は行っていませんでしたが、つい数年前まで現役の技術でありましたし、震災切手ですら四半世紀ほど前のこと。

「新版」しかお持ちでない、そこのア・ナ・タ。
ぜひ「旧版」とセットで読まれることを、お勧めいたします。

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