日本関連の収集家にとって郵便検閲と言えば、戦後におこなわれた占領軍による郵便検閲が最もポピュラーな存在だと思いますが、それ以外にも日本国内の事情により検閲が行われたことがあります。例えば二二六事件であったり、太平洋戦争であったり。
ですが、それらは占領軍によるものと比べると規模が著しく小さく、意識して入手に努めないと中々コレクションに入ってきません。
僕の手元にも、占領軍関係の検閲印はそこそこの枚数が意識しなくても入手できていますが、太平洋戦争によるものは2、3通ですし、二二六事件に関しては0枚です。
『郵趣手帖』1958年冬号と1959年春号に藤野力氏が「太平洋戦争中における郵便検閲に関するメモ」として連載した解説は、この種の解説としては初めてのもの。
これに続く同種のまとまった解説としては、「逓信省・通信院検閲郵便の研究」として、新井紀元・荻原海一氏が『いずみ』209号(表紙の号数は誤って210号になっている)1981年8月まで、20年以上も無かったことを考えると、いかにこの分野が目立たない存在であったかがわかります。
はじめに
臨時郵便取締令
検閲機関の構成と活動
検閲証示印並びに封緘証紙
国内編
逓信省関係
検閲印
符号印
検閲封緘紙
通信印関係
検閲印
符号印
検閲封緘紙
変形櫛型検閲印
櫛型検閲印の字体の相違
外地編
台湾
検閲印
検閲封緘紙
関東州
検閲印
符号印
検閲封緘紙
満州国
検閲印
符号印
検閲封緘紙
中国
符号印
南方占領地
検閲印
検閲封緘紙
憲兵名検閲印
野戦郵便局検閲印
これだけの内容をA5判11ページにまとめてあるのですから、アウトライン的な内容であることは仕方がないことだと思いますが、1958年という時期的なことを考えると、本稿をまとめる着眼点は素晴らしい先見性があったと思います。
あの当時、こうした検閲を郵趣的に解明することを考えた収集家が、どれだけいたことでしょうか?
先に紹介したように、これに続くまとまった解説(個別の報告は多数ある)が20年以上も無かったことが、本稿の重要性を示していると思います。