1972年10月14日発行の鉄道100年記念切手からの1枚。
階調凹版3色刷りの素晴らしい切手で、日本で発行された鉄道切手の中では最高の出来栄えだと思っています。
図案は、D51と並んで日本の蒸気機関車では最も有名なC62。
鉄道好きでなくても、知っている方が多いと思います。
このC62、貨物用のD52形蒸気機関車のボイラーを流用して昭和23〜24年にかけて49両が作られたものなので、正確には新製ではなく改造されたものなのです。
では、切手の図案にされたのは、この49両のうちのどれか?
それを特定するための大きなポイントは、切手の機関車の除煙板にスワローエンゼルと呼ばれるツバメのマークが付いています。
これが付いているだけで、おそらくは2号機であるという見当はつくのですが、スワローエンゼルを付けたC62は他にもあるので、これだけでは特定はできません。
そこで、ルーペでナンバープレートを確認すると、「C62-2」と読めました。
スキャニングで拡大したのが下の画像です。
2号機で、しかも「つばめ」のヘッドマークを付けていますから、大阪の宮原機関区に居た昭和25〜31年頃の姿を図案化したものと考えられます。
下の写真は、昭和46年6月18日に北海道の長万部駅で撮影された2号機です。
つまり、切手に描かれた2号機は大阪から北海道に引っ越して、そこで仕事をしていたわけですね。
実は、東海道本線の電化が完了(昭和31年11月)して間もなくの、翌年2月に小樽築港機関区へと転属になっています。
この2号機、東海道時代は切手に描かれた特急「つばめ」の牽引機として注目を集めていましたが、その後の北海道では都落ち感が漂うかと思いきや、当時のSLブームに乗って、東海道時代の何倍もの注目を集める存在になったのです。
その写真が下。
C62が2両繋がった重連なのですが、先頭の機関車が2号機です。
この2号機、小樽築港機関区で最後に与えられた仕事が、函館と札幌を結ぶ急行「ニセコ」の長万部と小樽間の補機運用。
函館本線の長万部と小樽の間は山岳線のため、蒸気機関車1両では長大な急行列車を牽引できないので、補助機関車を付けて2両で走るわけです。
大自然の中をC62が重連で走る姿は、絵になる風景としてSLブームの中で大注目を浴び、日本中からファンが押しかけることになりました。
しかも、押しかけたのはファンだけではなくて、あのお堅いNHKも特集番組を作っちゃうほど。
実は、この写真の撮影者は故人なのですが、今で言う「撮り鉄」として昭和30年代から平成の時代まで、約6万カットの鉄道写真を残しています。
たまたま、生前に僕と交流があったので、亡くなる直前に全てのネガと撮影記録を譲られたのですが、その中に北海道で活躍する2号機の写真が何枚も残されていました。
この2号機。
今は、京都鉄道博物館の旧梅小路蒸気機関区で見ることができます。
いい話ですね。
これは、鉄道郵趣のネタになりますね。