ドイツで世界カタログといえば『ミッヘル』。
詳しい記述で、図版も豊富なことから日本でも愛用者は多いと思います。
実は、戦前のドイツでは『ミッヘル』の他に、『ゼンフ』というカタログが発行されていました。
僕の手元のは、この2種類のカタログが揃っているのですが、比べてみると『ミッヘル』は通り一遍のプライスリストとしてのカタログなのですが、『ゼンフ』はさすがに詳しく、カタログという性格のみではなく、ちょっとしたハンドブックという性格までをプラスしたものになっています。
例えば、下の画像は日本のページから手彫切手の最終部分と小判切手の最初の部分ですが、テキストが各所に記されています。
このテキストは、各切手の一般的記述以外に、見本や模造品、消印などについても詳解されていますし、当然ながら複数の目打がある切手については、目打のバラエティを記録しています。
例えば菊切手の単線目打については、11 1/2〜12と12 1/2〜13という2つのグループに分けられていることは特筆されるべきことでしょう。
古くからの収集家が『ゼンフ』を称賛していたわけは、このように単なるカタログではなく、ハンドブック的な性格を兼ね備えていた点にあります。
今では考えられないほど情報量が少なかった当時、このカタログが持っていた情報量は切手の百科事典的な感じだったのでしょう。
戦後のドイツ体制の中で『ゼンフ』は数奇な運命をたどるわけですが、仮に西側の体制に入っていたとしたら、また違った展開になっていたのかも知れません。