星名定雄「イギリスの鉄道郵便について」

郵趣において「研究」とか「論文」と称するものは多くありますが、その多く(おそらく9割は超える)は「解説」であり、「研究」や「論文」とは程遠いものであることは、各雑誌に投稿されたされた文章を読めば一目瞭然。
今日ご紹介する星名定雄氏による「イギリスの鉄道郵便について」は、郵便史研究会が発行する『郵便史研究』第31号(2011年3月)に掲載されたものですが、「論」として展開されたものではなく、単なる「解説」に過ぎません。
しかし、本文は海外、しかも伝統あるイギリスの鉄道郵便史が手際よくまとめられている点において、極めて有益なものであり、多くの郵趣家に郵趣における一般的教養として読んでいただきたく、一読をお勧めするしだいです。

皆さんもよくご存知なように、イギリスにおける郵便切手の発行は1840年ですが、それ以前の1830年に既に鉄道郵便が始まったことは、私としてもすっかり盲点でした。
プレスタンプ時代の鉄道郵便の存在。
まさに先駆者としての様相を示しているとも言えます。

イギリス郵政が、特に鉄道郵便の初期において、各鉄道会社に対して高圧的、不平等な態度で臨んでいたことは有名な話しですが、「動く郵便局(TPO)の誕生」の章で、それについて法令を紹介しながらわかりやすく解説しています。
また、郵便車の変遷や郵便車内での仕事の様子を具体的に紹介し、通過駅で使用する郵袋自動受渡装置の解説など、貴重な図や写真を用いて解説が進められています。

郵袋自動受渡装置は、日本でも短期間に使用された実績がありますが、危険性が大きかったことから鉄道郵便で定着しなかったシステムです。
文章で説明してもなかなか難しいものですが、YouTube にイギリスで1936年に製作された鉄道郵便映画が公開されているのを見つけたので、下記にURLを紹介しておきます。
この映画を見ると、高速で走る列車からの郵便物受渡しが、大きな危険を伴う作業であったのかを知ることができます。

23分の短編映画ですが、当時のイギリス鉄道郵便の実像を知ることができる、極めて貴重な映画です。
タイトルは “Night Mail” 。
夜行鉄道郵便専用列車。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。必須項目には印がついています *