『RomanceCar』という、鉄道雑誌がありました。
創刊は昭和21年6月で、発行は東京鉄道同好会。
同書は、戦後の鉄道関係商業誌の刊行が始まる前に創刊されたもので、終戦間も無い頃の鉄道の動向を伝える唯一の史料として、本書でしか確認できない事柄も多く、今でも基本文献の一つとして必須の雑誌に位置づけられています。
内容は、硬派な史料的価値が高い記録を柱としているのですが、趣味誌でもあるので、所々に柔らかい解説も含まれています。
そのような中に「鉄道を描く切手」というのが、第4〜6号(昭和22〜23年)に連載されています。
筆者は江本廣一氏。
図版は無く、記事としての面白味は全くありません。
ですが、僕が注目したのは、氏は戦前から鉄道切手を専門に収集していたという点。
残念ながら、東京大空襲によりコレクションも文献も全てを灰にしてしまったということですが、戦後いち早く入手した『スコット・カタログ』をネタに、鉄道切手の紹介をされています。
図案別収集、トピカル収集というのはヨーロッパでは19世紀末頃には出現していましたし、初めて切手展で展示されたのは、1928年(昭和3年)とされています。
僕の手元に、昭和11年に切手趣味社から刊行された『郵便切手の集め方』がありますが、同書では「画面に依る特殊切手の集め方」という章を設け、いわゆるトピカル・コレクションの解説を行っており、その中で「交通切手」の一項目として「汽車」を筆頭にあげています。
戦前の日本において切手収集の中心は、日本切手が筆頭であり、それに続いて外国切手、つまり両者を合わせて国別収集が本筋であったことは、戦前の多くの切手商広告を見れば理解できます。
そうしたなかにあって、江本氏のようなトピカル収集、中でも鉄道切手を専門に収集されていた方は、かなり珍しく、また貴重な存在だったと思われます。
江本氏については、戦前の切手収集人名録を数種確認しましたが、今のところは未確認。
引き続き、機会がある事に確認を続けたいと思います。