手放しで喜べない

今年のジャペックスは、トラディショナル部門は良い作品が集り、一参観者としては楽しめました。
我々の外国切手グループ(亀戸大根の会)からも、バーメイ2人、ラージバーメイ1人が受賞者となり嬉しい限り。

会場では「見応えがあった」という声が多く聞こえ、単純に素晴らしい作品を見るだけであるならば、成功であったと思います。
ですが、その一方で毎年のことですが、個人的には危機感を再認識したしだいです。

それは、出品者の多くがお馴染さんであり、それらの方達が展覧会を支え、レベルを上げられていたことで、それを逆に考えると、将来性という点で未来への希望が持てないことを現していると思います。

本来、切手展を支えているのは銅賞〜銀賞クラスの収集家で、それらの作品を改善を重ねながら大銀賞や金銀賞へとランクアップしていくのが、切手展の望ましい姿だと思います。
ですから、このクラスの出品者が多くないと、出品者の新陳代謝が進まないのではないでしょうか。
そうした意味で、手放しでは喜べないと思っています。

僕の知り合いでも、収歴は長いのに競争展には一度も出されたことがなく「一度出品されては?」と、お勧めしても「いや、私の集め方なんて評価されないから」とか「とてもじゃないけど、ジャペックスに並ぶ作品とはレベルが違うよ」という趣旨の答えが複数人から返ってきます。

こうした答えが返って来る状況は、いわゆる負のスパイラルに、既に陥ってしまっているのではないかと思います。
もちろん公募型競争展なので、どのような人が出品しても良いのですが、今の状況を見ていると「切手展をつまらなく、将来が見えない形にしているのは、実は収集家自身ではないか」と、感じています。
と言うのは、今の競争展に見られる状況は常連が目立ちすぎてしまい、銅賞〜銀賞レベルの新規出品者にとっては、敷居の高い状況になっているのではないかと。

また、主催者が作品募集にあたって、どのような努力をされているのかは知りませんが、少なくとも積極的に新規出品者を求めているようには見えません。
1970年代、80年代、90年代を思い返せば、あの頃はJPSグループ全体で出品者の掘り起こしを行っていたと思います。
選挙で例えるならば、ドブ板選挙とでも言いましょうか。

さて、下のリーフですが、これは1977年の全日本切手展に出品された某氏の作品からの1リーフ。
縁あって、僕がコレクション全体を今は保管しています。

某氏は、その後、日本では有数のスウェーデン切手収集家へと成長し、国内はおろか国際展でも活躍するようになります。
そんな氏の競争展初挑戦だったこの作品は、入選こそしましたが入賞にはならず、つまり銅賞にも手が届きませんでした。
その後の氏は、改善を重ね、スウェーデンの複数のテーマで競争展で活躍するようになります。

僕も、今年のように見応えの有る作品がズラッと並べば、一参観者として嬉しくなりますし、参観した甲斐があったと満足もします。
ですが、その満足感は自分だけが楽しんだ満足感であり、未来の切手展に対しては無責任な満足感だと思うのです。

僕は、生きているとするならば、10年後、20年後もジャペックスを楽しみたいですから、主催者には銅賞〜銀賞クラスの作品の集積に努力して欲しいのです。
それは、未来への投資と考えても良いと思います。

手放しで喜べない」への11件のフィードバック

  1. 郵趣誌には出品体験記が掲載されて刺激になっていましたし、各支部でも出品の呼びかけをしていたと記憶しています。出品促進に限らず郵趣拡大への運動が不足していると思います

    1. いつも、ありがとうございます。
      おっしゃるとおりで、全く郵趣というカテゴリーの成果に繋がっていない切手女子に熱を上げている、JPS執行部の神経が理解できません。
      今の現状に不満を持っている方がJPS退会に直接的に繋がっている事は、見て見ぬふりでしょう。

  2. いつも楽しく拝読しております。Japexの件は全く同感です。私は昨年までほぼ毎年Japexに出品して来ました。新しい方の啓発になればと、最近は、身近な現行切手を出品しました。幸い入賞しましたが、昨年は私の作品の扱いが雑で、かなりのリーフが部分的に損傷して戻って来ました。協会からはお詫びの書簡と今後の改善策をいただきましたが、大収集家でない作品は大事に扱われないのかなと、少し残念に思い、また、万が一のときの補償が曖昧なので、今年は出品を見合わせました。審査評も最近はましになりましたが、以前は、あれが無い、これが無いからダメだとかで、協会は、コレクターを育てる気が、本当に、あるのかなと疑問に思いました。

    1. いつも、ありがとうございます。
      それは災難でした。
      私の主戦場は、郵政省、郵政公社時代の全日展でしたから、ジャペックスには2回しか出品していません。
      そのうちの1回は、国際展に出品した「ハンガリー19世紀の郵便印」で、この時は招待出品でした。
      出品に際して付けた条件が、展示、撤収ともに自分で行うことで、他人が触るべからずでした。
      2001年の東京国際展で、初めてJPSが実行委員会に参加。
      ボランティアを大量に動員して、展示作業を行わせたのですが、その扱いの酷かったこと。
      1991年までは連合傘下の郵趣会のみが展示作業を担当したので、扱いに慣れておりトラブルは聞いていません。
      JPSは、その組織性からボランティアの大量動員は得意なのですが、スキルという点で全く使い物にならない印象を強く持っています。

      1. 返信、ありがとうございます。ちなみに、出品要項を見ますと、会期中は出品者が作品に保険をかけることを促していますが、私が知る限りでは、そのような保険は存在しません。皆さん、どのようにされているのでしょうか。

        1. 私は、国内展では無保険でしています。
          と言うか、ほとんどの人が無保険です。
          以前に、広島のスタンプショウに招待出品を依頼された時に、広島の豪雨被害が頭にあったので、招待出品なのだから主催者側で保険を掛けるように申し出ました。
          ところが、主催者側が保険を拒否してきたので、出品を取りやめにしたこともあります。
          人様のコレクションを「貸してくれ」と言うのに、無保険とは非常識極まりない人達であると判断したからです。
          さて、切手展用の保険ですが「展示物一環保険」での対応になると思います。
          これは、集荷、展示、返却までを対象とした保険で、評価額と実績により保険料が変わります。
          本来ならば、主催者がイベント用の保険(イベント中の怪我や展示品の破損に対応)に入るべきものと思いますが、今さら高額な保険料負担ができないし、そうした発想もないと思います。
          私は、こうしたことも含めて主催者が「趣味のことだから」に甘えているのだと思います。
          JPSの行っていることは、趣味を対象としたビジネスなのですがね。

          1. 丁重なご返信、ありがとうございました。大変参考になりました。

    2. おっしゃるとおりで、今年はシルバーブロンズがほとんどなかったのです。この層が薄いということは、新規参入や初出品の人が少なかったということを意味します。
      新たに参入して来る方が出てこないと、将来が暗いです。このままですと、切手展自体が将来はできなくなってしまうのではないかというおそれがあります。

      出品することに意義がある、賞は二の次でいいのです。
      協会主催のワークショップも参加者が固定化しているのか、何か打開策が欲しいところです。

  3. 追加コメントです。今年は郵趣サービス社のブースはなく、ボストークの標準リーフすら売られておらず、バインダーは切手商ブースの中古品のみ。これでは切手はアルバムに整理するという、切手展出品以前の基本が啓蒙できないと思いました。

  4. すみません。再度追加コメントです。4年前に丸一型便号空欄郵便印という作品をワンフレームクラスに出品しました、1段目と2段目を赤ニカバー、3段目を緑1銭カバー、4段目を小判はがきで見た目を整えたのですが、12番目と13番目が誤って入れ違って展示されており、がっかりした記憶があります。ダブルチェックしないからこういうことが起きるんでしようね。クレームしたかったですが、ムタだと思いしませんでした。

    1. あー、時々同じような間違いを見ますね。
      作品を見ていると「あれ?」と思い、よく見ると順番が違うの。
      展示中にフレームを開いて、並べ直しているのを見たことがあります。
      出品料を取っているのですから、適当では困りますね。

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