オクトパス・カラーライブラリー『切手』

小学生時代に読んだ一冊。

イギリスのオクトパス社が出版していたカラーライブラリーシリーズの一冊で、日本でも翻訳版が刊行されたもの。
原著は1974年、日本では翌1975年に刊行されています。
本家の方は各種テーマを100冊出版していましたが、日本ではどの程度まで出されていたのかは不明。
翻訳出版していた洋販は倒産してしまい今はありませんが、21世紀初頭までは洋書取次ぎの最大手として君臨しており、倒産した時には「洋書輸入はこれからどうするの?」と、ビックリしたものです。

目次は、最初の切手、封筒は語る、切手に見る郵便の歴史、記念切手、テーマコレクション、宣伝に使われる切手、切手のデザイン、切手のエラー、偽造切手。
こうして見ればわかるように、切手コレクションのススメ的な内容では無く、オーソドックスに「切手とは何なのか」を紹介する内容となっています。

本書は、当時としては珍しいオールカラー本として、また印刷も美しく、本書を買って来てくれた父親もそのような受け止めだったのだと思います。

いま読み直してみると、訳者が収集家ではないと思われる不適切な訳語が所々に含まれるのが残念な部分ではありますが、原本の構成がしっかりとしているので、不適切語の部分を割引いても楽しい本であることに変わりはありません。

僕が後年(大人になってから)本書の面白さに気がついたのは、「封筒は語る」の項目に目が留まってから。
それは、収集家には当たり前の使用例としてのカバーの面白さを、一般向けに平易に解説している点で、取り上げているのはクラシックカバーが多いのですが、現代物の言ってみれば一般の人の身近にある普通のカバーも例としても解説しています。

例えば、イギリスのある村の郵便局で1965年10月16日に強盗事件が起き、副局長が殺されてしまいます。
その時に一時期ですが、その郵便局が閉鎖され、代替局として村の教会内に臨時郵便局が開設されます。
そこの臨時局では応急の書留ラベルを使用しているのですが、それを貼付したカバーが残されており、その書留ラベルを鍵とすることにより、事件のことや郵便史上の出来事を知ることができるのです。
「封筒は語る」では、こうしたカバーにさまざまな事柄を語らせる例が、8ページにわたり15例が示されています。

本書は、全体にわたりクラシックから現代に至るまでの切手がバランスよく配されており、そうした意味でも一般向けによく考えられた編集だと思います。
また、郵趣的にマニアックな図版も多く、僕のお気に入りは「偽造切手」の項目に収められているスペラティのアプルーヴァル帳で貴重な写真です。

本書はA4判、オールカラー、69ページ。

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