『日本切手の製造』三島良績

切手の製造面については、三島氏による名著『切手集めの科学』があり、より専門的な技術書としては印刷局による『郵便切手製造の話』があります。
前者は418ページ、後者は317ページの大冊。

対して、今回ご紹介する『日本切手の製造』はハンディな80ページです。

たったの80ページではありますが、書名にあるように日本切手に特化した製造面の解説書であり、中身の濃さにおいては、製造面に関して読むべき最初の1冊としてオススメしたいと思います。
昭和39年の出版なので、その時点までの製造技術について解説されていますから、現行切手で言えば円単位までの技術書。

ここで重要なのは、製造面に関しては最新の技術書だけを読んでも役には立たず、その時代、時代のものを読まなくてはならないという点でしょう。

本書には、印刷局との関係が深い三島氏の著作だけに貴重な図版も多く、それだけでも興味深いのですが、特殊切手、コイル切手、切手帳、小型シートに関しても個別の章立てで、詳しく解説されています。

例えば、昭和22年発行の「東京切手展」(通称「うなぎ」)の小型シート。
それが、なんとあのように製造されていたとは・・・。
「あのように」の具体的な中身については、本書を読まれて確認してください。

本書はもともとが、切手収集家でありながら製造面の知識を持たない方を読者層として想定しています。
したがって、製造面の書籍でありながら極めて平易に書かれているのが大きな特徴でもあります。

実は、郵便史とか使用面を熱心に収集されている方と話している時に、たまたま話しの流れで製造面の話しを振ると「製造面は収集していないので」とか「製造面には興味がないので」と言われてしまい、話しがそこで途切れてしまい寂しい思いをする時があります。
こうした収集家にこそ、絶対にオススメ。

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