下の画像は、第1次昭和切手勢揃いのリーフ。
20代中頃に作ったリーフですが、30年以上も経った今でも昭和切手のアルバムのトップリーフとして現役です。
今更感がありますが、この切手が発行されるまでは田沢に富士鹿、風景切手を使っていたわけですから、当時の収集家ではない一般の人々は、郵便局の窓口で、あるいは家に届いた郵便物に貼ってある昭和切手を、どのような気持ちで見ていたのでしょうか?
一般的に、昭和切手の誕生については「時代遅れの切手図案の近代化」と説明されています。
たしかに、それはそうなのですが・・・。
下の画像は大正3年7月に刊行された『郵楽』創刊号の中から、発行者である木村梅次郎が執筆した「現行日本郵便切手に就て」。
と、まぁタイトルだけでは「なんのこっちゃ?」となりますが、ここで言う「現行日本郵便切手」とは、大正2年に発行が始まった田沢切手のことを指しています。
この記事の中で木村は、現行切手を「実際の處甚だ感服せず」と評し、「近年諸外国発行の新切手を見るに、益々意匠を凝らし土耳古の如き保守主義な国ですら(中略)名所古跡を現わしたる美麗なる大形の凹版印刷のものを発行」など、この他に幾つかの外国切手の事例を紹介しています。
そして「我国にても三景、富士其他の名所古跡或は風俗等を示せるものを発行したらんには有効なる世界的広告となる」とも述べています。
木村は、新切手として発行が始まったばかりの田沢切手の保守的な図案の陳腐さをこきおろし、当時、世界的に広がりつつあった風景や風俗を紹介する新しい切手図案の流れを紹介し、その切手の効果についても述べています。
昭和切手の発行は昭和12年ですから、それよりも23年も前に、後の昭和切手へと繋がる切手近代化への提言を展開していることに驚かされます。