腹抱えて笑った話し

例の風来坊のヤフオクをご覧になった方なら、意味不明満載感タップリの説明書きの中に「手彫切手用紙分類」という一覧が載っていることは、ご存知だと思います。
この多種多様な用紙の一覧を見る限り、多くの方が彼のオリジナルだと思われるでしょう。
でも、それは違うのです。
この一覧は彼のオリジナルではなく、ウッドワードの『大日本及全属国の郵便切手』からの孫引き。
もし、同書の日本語訳版(日本郵趣協会 1972年)をお持ちでしたら、P52〜55に記されている用紙の分類と解説をご覧ください。
この項目の丸写しであることがわかります。

皆さんご存知のように『大日本及全属国の郵便切手』という本は、書名が示すように手彫切手の専門書というわけではなく小判切手や菊切手、田沢切手、そして日本の影響下にあった台湾や朝鮮も扱うなど、いわゆる日本切手とその関連地域の切手の総合ハンドブックという性格のもの。
ですから、切手解説を展開する前に日本切手全体に渡る総合的な通論が記されており、用紙の項目もその一つなのです。
ところが、彼はそのことすら理解せずに丸写しして仕事を終えています。
『大日本及全属国の郵便切手』を持ってはいるけど読んだことがない彼は、同書=手彫切手の解説書であると、信じ難い誤解をしているようです。

そこで、下の画像を見てください。
これは、彼が出品の際にいつも掲載しているものです。
そこで私が思ったのは「あれれ、この表なんだか変だぞ・・・」と。
下の2種の紙、この2種は手彫切手の紙ではありませんね。
表の赤字は私が書き加えたものですが、14組(以下、ローマ数字をアラビア数字に置換え)の青味白薄無地洋紙というのは小判切手で用いられている白色薄紙のことで、15組の無地毛紙は大正毛紙のことです。
それが手彫切手の用紙ですか・・・。

『大日本及全属国の郵便切手』をお持ちでない方のために、念のため翻訳版の当該ヶ所の解説部分を載せておきます。
赤線は、わかりやすいように私が引いたものです。

このように、彼の示しているところは、昭和2年(1927)にウッドワードが提示した分類そのもの。
しかも彼は、同書を熟読するという最低限のこともしていませんから、小判切手や田沢切手で用いられる紙までを、手彫切手の紙として扱ってしまっているのです。
この誤りが、後述する致命的なミスを起こすのですが、彼は勉強など面倒なことは一切しない主義なので、自分でも気がつかないのです。

ウッドワードの分類は、もちろん自分で見て触ったりしながら行ったもので、いわゆるアナログですよね。
ですが、風来坊はアナログを全て否定し「科学は嘘をつきません」と、科学一辺倒の科学狂信者であることを、自らの言葉で示しています。
ですから、もちろん用紙の分類も科学的に行い、それに従っているはずなのですが、その行ったであろう科学分析の結果と、100年近くも前にウッドワードがアナログで行った分類がなぜ一致するのか・・・・。
ぜひ、お話しをお聞きしたいと思います。

ここまでが、今日のブログを読んでくださる方への前座です。
本題はここからで、下の画像をご覧ください。

これは、昨年9月17日締切のもので、洋紙改色カナ入り10銭のニ。
注目してほしいのは、私が赤線を引いた紙の分類の部分で「14組 青味白薄無地洋紙」となっています。
この用紙は先に説明したように、ウッドワード自身が「この紙は凸版印刷切手にしか現れない」と記したもので、ここで言う凸版切手とは小判切手を指しています。
小判切手収集家ならよくおわかりだと思いますが、極めて薄い白色純度の高い、ピンピンしたあの紙のことです。
彼に言わせると、あの小判切手専用の薄い紙が改色桜切手に使われていることが、科学的に実証されたそうです。

そして、もう一例。
こっちは、もっと凄い!!

こちらは1月15日に終了した鳥15銭のハ。
用紙は「15組 無地毛紙」だそうです。
ちょっと風来坊さん、15組の無地毛紙って言ったら大正毛紙ですよ!!!
へー、科学ってすごいんですね。
大正毛紙って言ったら、赤やら青の繊維が入っていて、おまけに透しも入っている!!
それが鳥15銭にも使われているなんて、凄い発見で素敵じゃないですか!
世紀の大発見ですから、ここは世界最高峰の郵趣研究誌であるロイヤルの会報に発表して、世界に一発かましてやりましょう!
日本なんてケチなことじゃなくて、世界的著名人になれます。
もしかしたら、ロイヤルのフェローにしてくれるかも知れませんよ。

このように、彼のやってることは極めて薄っぺら。
すぐにバレる嘘を、平気でつらつら書くわけです。
呪文のように意味不明な文章を沢山書き、どうでもよい分析機械の型番(本当に所持しているかは別な話し)を書いておけば、それに騙されて入札する小口の客を得るには、十分な演出なのだと思います。

ここまで、デタラメを平気で書いているのですから、彼が公表している分析データと称するものも、かなりの確率でデタラメだと考えざる得ないと考えます。
「科学は嘘をつきません」ですか?
でも、それを利用する人が嘘をつくことが度々あることは、これまでの科学史を紐解けばわかります。

以下は、別話題の付けたしです。
6月1日付けブログのコメント欄に、風来坊が商品解説の中で「発売数」として1枚単位で出てくることの出典先の話しがありました。
彼が出している数字の出所は『大日本及全属国の郵便切手』です。
翻訳版で示すと78〜79ページに「1871(明治4)年から1899(明治32)年までの郵便局発売切手額面別合計表」が載っており、そこの数字を写したものです。

結局彼が持っている戦前の資料というのは、1972年に出版されたウッドワードの翻訳本のみということがわかります。
存在の極めて怪しい彼の師匠が、「研究資料は、戦前のものだけにしなさい」と言ったそうですが、その割にはウッドワードの翻訳本だけとは、いささか寂しすぎますね。
しかも、その1冊でさえ全く読んでいない・・・・。

腹抱えて笑った話し」への6件のフィードバック

  1. 風来坊の付け焼き刃ぶりがよくわかります。
    笑ってしまいますね。

    しかし、写真であげた10銭も鳥切手も、一目で偽物とわかります。
    お粗末な人です。

    1. Mさん
      いつも、ありがとうございます。
      全く理解できないのが、すぐにバレるような嘘を平気で書き込むこと。
      人間ウオッチング的な興味で、一度会ってみたい気がするんですよね。

  2. 笑わせていただきました。
    鳥切手に毛紙、真正品なら郵趣的な大ニュース!です。
    全くそんなことはありませんが。
    科学はうそをつきません。
    私はウソをついています。と言っているようなものです。
    ちなみに細かい突っ込みで失礼しますが、
    本のタイトルは「大日本及「仝」属国の郵便切手」です。

    1. いつも、ありがとうございます。
      >「大日本及「仝」属国の郵便切手」
      あら!
      『仝』ですね。
      辞書登録の書名を直しておきます。
      何年(10年くらい?)もそのまま使っていました。
      ありがとうございました。

  3. 私も手彫コレクターの端くれとして、市田本以降の研究はある程度フォローしてきたつもりですが、ウッドワード本は読んでいませんでした。今回の件で大いに勉強になりました。ありがとうございます。
    中古の訳本がオークションに出てきたら、買って読んでみようと思います。もっとも出品者が風来坊だったら願い下げですが(笑い)。
    確かに大正毛紙の手彫切手には呆れますが、これからの論点は「紙とインク」になりますかねぇ。郵趣界の英知を集めていかさま鑑定の出鱈目さを暴き、インチキ宗教の教祖を黙らせたいものです。

    1. いつも、ありがとうございます。
      訳本なら、今なら当時の定価より安く入手できますよ。
      データの羅列なので、本として読めるとか、読んで楽しいものではありませんが・・・。
      ただ、ウッドワードが少ないと言ったものは、少ないですね。
      今では考えられない、世界中の厖大な量のコレクションを調査して書かれたものですから。

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