『税済印を使用した明治時代の郵便制度』

永冨氏の著作は、これまでにも当ブログで何回かご紹介してきましたが、本書は昨年のJAPEX出品作品の作品集です。

JAPEX会場で本作品に出会った時には、非常に興味深い内容であったにも関わらず、立ったままで多くの書き込みを全て読むには辛く、要所要所のみを拝見したに留まっていました。

今回、その作品がカラーで手元でじっくりと読めるようになったのは、大変有り難いこと。

先ず驚いたのは新聞帯紙で、発行所別にデータをまとめられている点です。
データの信頼性(調査された分母数字)が、どの程度担保されているのかは作品からはわかりませんが、本書をベースに逐次補強を行うことにより、よいデータ集になること間違いありません。
そうした意味で、こうして情報が公開される意味は極めて大きいと言えます。

作品全体を通して、リーフ下部に非常に解りやすい表が示されています。
郵便史のばあい、そのマテリアルが作品全体の中でどのような位置を占めるのか、またその意味が何であるのかを参観者が見失うことがしばしばあります。
しかし、本作品で示されている手法を用いることにより、その分野に疎い参観者でも的確に位置がわかります。

最近の郵便史作品の中には、切手展の作品というよりも、実物を貼付した解説書のような作品を見ることがあります。
僕も過去に何回か、国内外の切手展に郵便史作品を出品したことがありますが、「どこまで語ればよいのか」という問題を、常に自問自答しながらの作品作りでした。
テキストのない郵便史作品ほど辛いものはありませんが、テキストの有りすぎる郵便史作品も、これまた辛いものです。

筆者は、巻頭において作品の構成や記述に対しての迷いについて記していらっしゃいますが、これは突き詰めて行くと「郵便史」と「郵便史作品」の違いに行き着くのではないでしょうか?
巻頭を読んだ上で本書を見て行くと、ポスタルヒストリアンの悩みが見えてきます。

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