リンコルン『郵便切手の話』

日本で初めて刊行された切手収集入門書。
大正2年の発行で、発行者は和田商店の和田鑄三郎。
特に珍本では無いので、郵趣史に興味を持たれている方の中には、お持ちの方も多いと思います。
いかにも戦前の本らしい、装丁のしっかりした良い仕上がりの本なので、今でも古書市場で美本が出回っています。

本書の中で、
「数万種もある切手を悉く蒐集せんとするは愚かな試みではないか」
という問いに対して
「(一)娯楽的蒐集家は、そんな心配をしないで、出来る丈多種のものを蒐むるがよい、多く蒐めるほど趣味も利益も増大する。
(二)研究的蒐集家
は前者と異り、専門的蒐集法を執る必要がある。即ち切手蒐集に地理的、歴史的の想像上の限界線を設け、其限界内のもののみを集める事である」

つまり、専門蒐集は年代的な区切りと、国や地域別の区切りを設定して集めることとしており、まさに現在行われている専門収集のことを言っています。

そして、
(専門収集は)「完全なる蒐集を作り得ないにしても、善い蒐集を作ることが出来る」と結んでいて、大正初期の段階において、ゼネラル収集と専門収集の二者をこのように紹介しています。

さて、ここまで読んで21世紀の自分はどうか?
と考えると、確かにネパールやハンガリー、ワイルディングなどの専門収集を作り、その一部を国内外の展覧会に出品はしているものの、本質的な収集としては使用済ゼネラルなのではないかと。
つまり、リンコルンの言うところの娯楽的収集家に当てはまるわけなんですが、趣味としてそれで満足ですね。
色々な国の色々な切手を収集していると、幅が広がって実に楽しいものです。

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