絵葉書に貴重な車両を見つけた

「東海道沼津驛附近ノ富士」と題する絵葉書。
絵葉書製作者の意図が富士山にあることは明白で、そこに写っている列車は単なる脇役でしかないでしょう。
ですが、僕がこの絵葉書で注目したのは、風光明媚な大正初期の風景ではなく、脇役であるはずの列車。

下り列車を撮影した写真ですが、先頭の蒸気機関車は8850形というドイツ製のもので、1911年から導入が始まったもの。
その機関車の炭水車の後ろには二軸車が繋がっているのですが、更にその後ろの大形ボギー車に大注目です。

その車両を拡大してみました。

特に興味が無い人には普通の客車に見えると思いますが、実はこの車両、明治36年に逓信省が汽車会社に6両を発注した3軸ボギーの大形(20m級)郵便車(テユ1形)なのです。
車両の両端近くに円形に白くボヤッと見える所には、郵便マークが大きく描かれています。
後年、改造や改番を経てホユフ9890形になるのですが、写真を細かく観察すると改造後のホユフ9890形であることがわかります。

細かいことは鉄道郵趣研究会報に載せるとして、取りあえず皆さんに知っていただきたいのは、この車両をもって近代郵便車の始まりと言えるのではないかと。

それ以前の郵便車は、押印等を行う作業スペースや区分棚が設けられるのみの作業スペースしかありませんでしたが、この車両には車両中央に休息室(しかも、当時の二等室に準じた設備)、トイレや洗面所を設けるなど、郵便車消滅まで続く設備が整えられた最初の車両でした。

この郵便車が実際に編成に組み込まれた写真が少なく、意外なところで見つけたしだいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。必須項目には印がついています *