今日は、絵葉書を資料として使う時の注意です。
郵趣では絵葉書を積極的に使う事は少ないですが、郵便の歴史などの分野では事項の説明資料として用いる時があります。
ですが、その時に「絵葉書だから安心」と思って使ってしまうと、思わぬところに落とし穴があったりするので、注意が必要だと思います。
画像の絵葉書は、郵趣とは全く関係はありませんが、注意すべき事例として有益なのでご紹介します。
この絵葉書は、東海道本線の丹那トンネルに入る特急「つばめ」として、丹那トンネルや、戦前の超特急「つばめ」を説明する資料として、鉄道関係の書籍にはしばしば使われる有名な絵葉書。
1等展望車が前面に出ているので、説明資料としてはビジュアル的に第一級の資料と言えます。
実は、僕もつい最近まで「時代を象徴する資料として好ましい絵葉書」だと思っていました。
ところが、ところが、最近になってこの絵葉書がフェイクなものだとの結論に。
そう・・・。この写真、実は合成写真だったのです。
普通にパッと見た感じでは、全く違和感は無かったのですが、子細に観察したところ、あり得ない点が2ヶ所で見つかったのです。
それが、下の画像。
最初に左の拡大画像です。
トンネル手前に縦方向の架線柱らしき柱が建っているのですが、その柱が列車とかぶるところを見ると、なんと半透明に透けて見えます。
赤矢印の部分です。
本来ならば、柱の陰で隠れて見えないはずの車両が見えてしまっていると言うオバケ状態!
そして、もう1点は右の拡大写真。
赤丸で囲った部分ですが、なにやら車体からぶら下がっているように見えます。
このぶら下がったものの正体は、その形状から3位式入換信号機であると特定できます。
この入換信号機というのは、本線上ではなく、操車場や駅などの入換え設備のある場所に設置されているもので、皆さんが普通に見る信号機は高い位置に設置されていますが、この入換信号機は地面近くの低い位置に設置されているもの。
つまり、この写真の列車は操車場などで撮影されたものを、上手く丹那トンネルの写真に合成したわけですね。
その合成する時に、入換信号機を消すのを忘れて、そのまま絵葉書にしてしまったわけです。
このように、写真資料だからと言って無批判に利用してしまうと、思わぬ大怪我に見舞われてしまいます。
この絵葉書なんて、ホントに多くの書籍で掲載されているもの。
言い換えれば、誰もが疑わずに、無批判に使用していたことにほかなりません。
戦前や戦後間もない頃の鉄道走行写真は、当時のカメラの性能の限界もあって、列車がブレているのが普通ですが、これはピタリと止まっているように見えるので確かに不自然ですね。
カメラにも依りますが、これだけ被写体ブレを起こさずに撮影するには列車が相当減速していないと無理でしょうね。
ニッタ さん
いつも、ありがとうございます。
多少のトリミング等は知っていましたが、ここまで酷い合成写真は全くの想定外でした。
80年以上も、誰も気がついていなかったと思います。