「郵便検閲の思い出」

占領軍の郵便検閲については、郵趣的観点からは幾つもの解説がされていますが、実際に仕事に当っていた人達の記録については、あまり見ることがありせん。
そのような中で、『モダン・フィラテリー』26号(1989年)に、実際に検閲業務に当られた浅川昌文氏が「郵便検閲の思い出」と題する一文を発表されています。

驚いたのは、検閲員の募集が新聞広告で行われたことで、意外とフランクな集め方だったんだな、というのが正直な感想。
もっと、身元の確かな人を集めたのかと思っていましたからね。
それが、単なる新聞広告だったとは・・・。

採用後の研修は、二世の米兵が教官となり開封の仕方、シールの仕方、同封物の処理、検閲印の押し方から始まり、どのような内容を報告すべきかということで、最も強調されたのが通信の秘密を守ということだったそうです。

検閲報告の対象は20近くあったそうですが、共産主義、法律違反、米国映画、天皇、怠業、スパイなどが特に重要視されたそうです。
該当する報告には意見・風聞と事実の2種に分けたそうです。

特に問題が無い内容だと、葉書で100枚が10分程度だったそうですが、他人の手紙も1ヶ月見続けると飽きてしまい、そこで次は翻訳担当試験を受け、問題のある手紙を翻訳する部署に異動したそうです。

本記事は2ページ程の短いものなのですが、当時の検閲の実態を知ることができる、なかなか興味深い一文です。
この分野に関係のある収集家は、一読の価値が高いと思います。

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