フランス・ボルドー版

中学生の時に『モーパッサン短編集』を読み、そこに描き出された普仏戦争時のパリの生活や、戦争が人々に与えた影響に興味を持ちました。
ボルドー版は、まさにモーパッサンの時代の産物であり、モーパッサンが描いた人々の生活に直結する切手だと思います。

1870年7月末 普仏戦争の形勢が不利と判断したフランス郵政は避難の準備を始めます。
切手の印刷原版はパリに残し、大量の切手をツールに移動。

9月 第3共和国成立の布告が出る。このためパリに残っていたナポレオン3世図案の原版による切手印刷は中止。
残っていたセレスの原版を利用して「包囲版」を印刷し、包囲網内で使用。

包囲網外では、ツールに持ち出した切手が足りなくなってきたので、応急手段として地方配給用の臨時切手を計画。
製造は、ボルドー造幣局で行うことに。

最初にボルドーの造幣局に示された臨時切手の図案は、文字だけの稚拙なものであったことから、偽造が簡単に出来ることが想定されたため不採用になりました。
そこで検討の結果選ばれたのが、最初の切手図案であったセレスであり、ボルドー市内在住の彫刻家に原版作製が依頼されました。

当時、郵政長官は包囲下のパリに居たため、ボルドーとパリの間で図案やエッセイのやりとりが何度か行われ、ボルドー版についての郵政長官の指示も幾つかありました。
これらはバロンモンテ便を利用して行われています。

このようにして作られたのが、画像に示すボルドー版と呼ばれる切手です。
切手の拡大画像を見ればわかると思いますが、頑張って印刷はしているものの、臨時切手の感じを色濃く漂わせる仕上がりです。
そして、印刷はなんとか出来たものの、ボルドーでは目打器が入手できなかったので完成品は無目打となってしまいました。

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